いよいよ引っ越しが決まって、賃貸アパートを退去する段取りを組まなければならないとき、何をすれば、どう動けばよいか分からないものです。
まず、退去するときの流れについてご説明します。
退去する時の流れは?
引越しが決まったら賃貸契約書で解約方法を確認する
引っ越しが決まったら、まずは賃貸アパートを借りる時に不動産会社を通じて家主さんと交わした「賃貸契約書」を見て、解約方法を確認しましょう。
万が一「賃貸契約書」をなくした場合は、直ちに管理会社に連絡をしましょう。
コピーを補完しているはずなので、コピーをもらうようにしてください。
ちなみに、アパートの解約を管理しているのは、お部屋探しをした不動産会社ではなく、アパートを管理している管理会社であることが多いので、それも賃貸契約書を見て、確認することをおすすめします。
「賃貸契約書」を見つけたら、必ず確認すべきことが4点あります。
項目ごとにご紹介します。
「解約」に関することが書いてある箇所を確認
「解約」に関することは、賃貸契約書の一番後ろのページに記載があることが多いです。(そうでない契約書もあります)
「解約」というフレーズが書いてあるページを探しましょう。
そして、そこには大体「乙は、甲に対して少なくとも30日前に書面をもって解約の申入れを行うことにより、本契約を解約することができる」といった文章が書いてあります。
ここでチェックしたいのが「いつまでに」「どうやって」解約する旨を伝えるのか、ということです。
ほとんどの物件が「30日前に書面で解約の申し入れを行うこと」であることが多いですが、中には60日前、半年前といった表記をしているところもあります。
また、最近はwebで解約手続きをとる管理会社もあるので、自身の賃貸契約書をチェックすることをおすすめします。
そして、解約の旨を書いた書面は必ずコピーをとり、保管しましょう。
解約時に月々支払っている「家賃」はどうなるのかを確認
続いて「賃料(家賃)」について記載があるページを探します。
ここでチェックが必要なのが、解約時、家賃は「月割り」になるのか「日割り」になるのかです。
イメージしやすいように例をご覧ください。
【月割りの場合】
3月9日に退去をするため、3月9日に解約希望を出した場合、3月1日~3月31日までの1か月分の家賃が発生します。
月割りの場合、3月1日に退去したとしても、3月31日までの家賃が発生する仕組みです。
【日割りの場合】
3月9日に解約希望(同日に退去予定)を出した場合、3月1日~3月9日までの9日分の家賃が発生します。
つまり、1か月分の家賃を30日、あるいは31日で割って、1日あたりの家賃を計算し、請求される仕組みです。
日割りの場合、管理会社によっては1か月が31日ある場合も、1か月を30日計算をして1日あたりの家賃を出すところもあるので、どういう形態で計算を行うかチェックをしましょう。
月割りと日割りの例をお伝えしましたが、まれに「半月割り」という家賃計算方法もあります。
これは3月9日に解約希望の場合、3月1日~3月15日までの半月分の家賃を支払うという方法です。
つまり、15日単位で計算するということです。
半月割りが条件の場合は、引っ越し予定日を月の15日を過ぎないよう調整することをおすすめします。
「敷金」の清算方法について確認
敷金は物件の家主さん(あるいは管理会社)が家賃滞納や、物件を貸すことでひどく汚れたり、壊れたりするリスクを避けるために、事前に借り主から預かるお金のことをいいます。
つまり、リフォームが必要なほどの大きな汚れや破損(壁に穴が開く、たばこのヤニで壁の色が変わるなど)が生じなかった場合、通常に使用した場合には、借り主に返金されるお金です。
この敷金は「原状回復(次の借り主のために、大きな汚れがなくても再度壁を張り替えるなどのリフォームをすること)」に使用される契約になっていることも多いので、契約書をしっかり確認しましょう。
「短期解約違約金」の有無を確認
賃貸物件によっては「短期解約違約金」が発生することがあります。
例えば、「1年未満の解約である場合は家賃2か月分の支払い義務がある」などの違約金の支払い義務がある場合があります。
急な引っ越しの場合は仕方がないですが、調整がきくのであれば、短期解約違約金が発生しない時期になってから引っ越しすることをおすすめします。
この4点を賃貸契約書でしっかり確認しましょう。
1ヶ月前までに家主に解約予告の連絡をする
賃貸契約書に、家主(管理会社)に対して、解約の旨はいつまでに連絡をしなければならないのかを確認した後は、いよいよ解約予告の連絡をします。
地域によって異なりますが、ほとんどの賃貸物件が1か月前に連絡をしなければなりません。
解約予告とは、退去届けを送る前に、家主(管理会社)に「〇月〇日に解約をする予定だ」と連絡をすることです。
ここには、移転先と敷金の払い戻しがある場合は清算口座などを記入します。
退去届を送る
解約予告をした後、退去届けを送ります。
退去届けは、解約予告連絡時に受け取るか、最近は賃貸契約書に付属していることも多いです。
ここに必要項目を記入し、家主(管理会社)へ郵送か、ファックスあるいは、WEB入力を行います(物件のやり方に合わせてください)
自身が記入したものは、コピーをとり保管をしましょう。
引越し当日に管理人に退去立会いをしてもらう
「退去立ち合い」とは、引っ越し当日(部屋を明け渡す日)に管理人(管理会社)と室内のチェックを行い、鍵の返却を行うことをいいます。
退去立ち合いには平均15分~45分時間が必要です。
この立ち合いが敷金の支払い有無を大きく作用することになります。
立ち合いまでにすべきことをご紹介します。
電気・ガス・水道の契約終了手続き(転居手続き)を完了
ライフライン関係は引っ越し当日に日程をそろえて解約するようにしましょう。
退去立ち合いの際に「電気・ガス・水道は解約済みか?」と必ず確認されます。
また、ガスはガス会社と契約者本人の立ち合いが必要であるため、退去立ち合いの時間までに、完了するよう動きましょう。
水回り(キッチンのシンク、洗面台、トイレ、お風呂場)の掃除
退去立ち合いの際は水回りの掃除をしておきましょう。
退去後、専門のハウスクリーニング業者が掃除をしてくれますが、特に水回りの汚れは目立ちます。
例えば、洗濯機を外した後の洗濯機置き場は、ホコリがよくたまります。
また、お風呂場の水アカも目立ちます。
きれいに使用していたことをアピールするためにも、できるだけ、水回りはきれいに掃除をして、退去立ち合いを迎えることをおすすめします。
あとは、たばこのヤニ汚れがついてしまったり、壁に穴が開いてしまうなどのトラブルは隠せないですし、隠してはいけないので、自分からお詫びをするようにしましょう。
(画鋲の穴など小さいものは自分から言わなくて良いです)
後日、敷金を返してもらう
退去立ち合いが完了し、しばらくすると、解約手続き時に記入した転居先宛てに、敷金精算の書類が送付されます。
そこに、「入居時に支払った敷金から引かれる金額」「家主さん(管理会社)が負担する金額」「返金額」が記載されています。
それを、コピーをしてとっておいた賃貸契約書と、退去立ち合い時に確認した内容と照らし合わせて、違いがないか確認をしましょう。
賃貸アパートを退去する際によく起こるトラブルが、この「敷金の返金」についてです。
自分に非がないことについての請求が来ることがないように、しっかり退去時に管理会社に状況を伝えるようにしましょう。
退去する時の注意点
ここまでは、賃貸アパートの解約手続き、退去方法についてご説明しました。
その他、退去する時の注意点をご説明します。
賃貸契約書で解約事項を確認する
これは賃貸契約書についてご説明した内容と重複しますが、退去する時は、退去届けを出すだけでは終わりません。
その他、自分で各所に連絡をし、解約をしなければならないことがたくさんあります。
下記、項目ごとに解約をしなければならないことをお伝えします。
- 電気・ガス・水道のライフライン
- NHK
- インターネット
- 固定電話・新聞(利用している場合)
- 郵便の転送
- 市役所へ転出届け(住民票の変更)
この6点は解約し、引っ越し先に転居届を提出しましょう。
家賃の精算方法を確認する
これも、賃貸契約書についてご説明した内容と重複しますが、退去時の家賃の清算方法を必ず確認しましょう。
自分の賃貸物件は「月割り」「日割り」「半月割り」のどれなのかを確認し、引っ越し日程を設定しましょう。
敷金の精算方法を確認する
退去立ち合いのご説明で、敷金の清算方法についてお伝えした内容と重複しますが、敷金の清算は、退去立ち合いの約1か月後に確定することが多いです。
解約手続きの際に、転居先情報と、敷金を変換する口座番号を記入する欄があります。
そこに記入した転居先宛てに、管理会社から敷金返金額を記載した書面が届きます。
その書面を見て、間違いがなければ、承諾サインをして管理会社に送り返します。
これで敷金の清算の手続きは完了し、記載された返金額が、後日指定口座に振り込まれる仕組みになっています。
原状回復ってどこまでするべき?
退去時に原状回復(お部屋を入居したときに近い状態にすること)をどこまですべきか悩む人は多いものです。
そして、退去立ち合い時に発覚する原状回復費用も、入居年数や間取り、築年数、汚損の状態や契約時の条件によって、金額は大きく異なります。
今回は、自分が汚損をしていない請求が発生しにくい、原状回復の方法についてお伝えします。
グレードアップ・自然損耗・経年変化は借り主負担とならない
賃貸物件の原状回復費用は、「貸主負担」であることがベースです。
借り主負担となるのは、例えば、床にたばこの焦げ跡をつけたり、壁紙を大きく破っていたりなど、明らかに借主に過失がある場合のみで、普通に住んでいれば、退去費用は発生しないものです。
しかし、近年部屋のグレードアップや自然損耗、経年変化を改善するために、原状回復費用を請求する管理会社も増えています。
原則、通常の使用の範囲内である経年劣化による小さな損傷の修繕費用は家賃に含まれているものです。
今回は、借り主負担とならない原状回復費用の請求を項目ごとにご紹介します。
グレードアップの要素があるもの
- 畳の表替え、裏返し
- フローリングのワックスがけ
- 網戸の張り替え
- 借主が通常の清掃をしている場合の全体のハウスクリーニング
- エアコンの内部洗浄
- 台所、トイレ等の消毒など
自然損耗、通常損耗によるもの
- 日照等による畳、クロス等の変色
- 家具の設置による凹み、設置跡
- 冷蔵庫等の設置による壁の電気ヤケ
- ポスター・カレンダー等の跡、画びょうの穴
- エアコン設置によるビス穴、跡
- 自然災害によるガラス破損等の損傷
- 網入りガラスのひび割れなど
経年変化、その他によるもの
- 耐用年数経過による設備の故障
- 耐用年数経過による浴槽のひび割れ
- 鍵の取り替え(破損、紛失がない場合)など
これらは、本来借主が負担する必要がないものです。
もし、退去時に上記項目に該当する内容の請求があれば、管理会社に問い合わせをして、確認することをおすすめします。
借り主に原因があるものは負担する
一方で、借り主に原因があり、原状回復するために負担が必要なものがあります。
項目ごとにお伝えします。
善管注意義務違反によるもの
- 飲物をこぼしたことによるシミ、カビ
- 窓の閉め忘れなどの不注意により生じた畳、フローリング等の変色
- 家具の移動、引っ越し作業によるキズ、汚損
- 落書き、ペットによるキズ、汚損、におい
- クーラーからの水漏れ放置による壁の腐食
- 台所、換気扇等の油汚れ
- 風呂、トイレ、洗面台等の水あか、カビ
- 鍵の紛失、破損
- その他借主の不注意による毀損、汚損など
不適切な管理、通常の使用を超えるもの
- タバコ等のヤニ、におい
- 重量物設置の釘穴、ねじ穴
- 結露を放置したことによるカビの拡大など
これらは日頃気を付けて生活していれば起こらないことですし、こまめに掃除をしていれば解決します。
そして、部屋を大切に使用していれば原状費用が発生することも、ほぼありません。
引っ越しが決まっていて、上記項目に当てはまる項目がある方は、できる限りきれいな状態にして、退去立ち合いを迎えることをおすすめします。
もっと詳しく説明している資料
ここまで、賃貸アパートを退去する際の手順と抑えるポイントについてお伝えしました。
賃貸物件を退去する際には確認項目や気を付けなければならないことがたくさんあります。
下記に、もっと詳しく説明している資料をご紹介します。
ふっかける管理会社がいるので注意
中には、原状回復費用請求を、借り主にふっかけてくるような、悪徳な管理会社もあります。
もし、自覚がない原状回復費用を請求された場合、それが本当に正しい請求なのか確認しましょう。
下記に、悪徳な管理会社に、原状回復費用をふっかけられた事例をご紹介します。
賃貸の立会い確認が終了。予想通りガイドライン無視(耐用年数)の金額が提示された。そのことを不動産屋に伝えると、「ご存じでしたか?!」と言って即時に訂正された。5万円の支払いが6千円の敷金返金に変わった。無知では毟り取られる世の中。 pic.twitter.com/MJR1AdxXHW
— zico39 (@Zico39_) 2016年7月31日
レオパレスを退出する時にルームクリーニング代2万円の他
壁紙交換代20万払えって言われて
「請求書だしてくれ、実際に適切かどうか消費者庁に確認して検討する」と言ったら
「じゃあいいですぅ・・・」ってなった、これ本当だからね https://t.co/KV88UltUWx— 辻善 (@tsujizen) 2016年7月31日
敷金などの賃貸契約トラブルで困ったら国民生活センターや法テラスへ相談を
いざ、退去時にトラブルが発生したら、どうすれば良いか分からなくなるものです。
その際は、プロに相談しましょう。
下記URLを参考にして、ぜひ相談をしてください。
- 国民生活センター:全国の消費生活センター等_国民生活センター
- 法テラス:敷金でお困りなら法テラス|法律を知る;相談窓口を知る;道しるべ
実際に賃貸アパートを退去時に起こったトラブル事例をご紹介します。
- 賃貸アパートの大家から建物の老朽化を理由に退去を求められているが、引っ越し費用に比べ立ち退き料が少なく納得できない。
- 8年間居住した賃貸アパートを退去した。
ハウスクリーニング代等高額な修繕費用を請求された。払わなければいけないか。 - 娘夫婦が2年居住した賃貸住宅を退去したが、原状回復費用として110万円請求された。
どう対処すればよいか。 - 震災で被災し賃貸アパートに住めなくなったため退去したが、住めなかった期間の家賃や退去費用を請求された。
納得できない。 - 8カ月間だけ住んだ賃貸マンションを退去したら、高額な修理費を請求された。
いくら支払うべきか。 - 最近、賃貸マンションを退去した。
立会い時に「修繕箇所はない」と言われたのに、後になって修繕費を請求されている。
納得できない。 - 娘が8年間居住した賃貸アパートを退去したところ、契約書にないエアコンクリーニング代等を請求された。
敷金を上回っている。どう対処すればよいか。 - 賃貸アパートの退去時に、加湿器の水漏れで床が一部変色していた。
床を全面張り替える費用を請求されているが、納得できない。 - 契約した賃貸マンションが事故物件だとわかった。
2日後に解約したが、敷金しか返還されなかった。
納得できない。 - 娘が賃貸アパートの契約をした。
ところが、玄関の床がへこみ、部屋のカーペットにカビがあり、住める状態ではない。
修理してほしい。
(引用:賃貸住宅の敷金、ならびに原状回復トラブル(各種相談の件数や傾向)_国民生活センター)
まとめ
- 賃貸契約書で解約方法を確認する
- 退去1か月前までに家主に解約予告連絡をする
- 家賃の精算方法を「月割り」「日割り」「半月割り」のどれか確認する
- 敷金の清算方法を確認する
- 部屋の原状回復はどこまでするべきか把握する
- 賃貸契約関係のトラブルが起きた場合、国民健康センターや法テラスへ相談をすること
【参考】
引越しでやるべきことを全部わかっていますか?やり残しがあると大変です。
こちら↓の「引越しやることリスト」が引越し準備に役立ちます。
※引越し1ヶ月前~引越し後2週間以内にやるべきことを一覧で説明しています。
引越し代を1番安くする方法
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